【解説】五十肩(肩関節周囲炎)は、40代~60代に多く見られる肩の痛みと可動域制限を伴う疾患です。理学療法士が五十肩の痛み・可動域制限の改善法を解説!

「肩がズキズキ痛む…」
「腕を上げると肩に激痛が走る…」
「夜間、寝ているときに肩が痛くて目が覚める…」
「肩甲骨のあたりまで痛みが広がる…」
「腕が上がらなくなった…」
「後ろ手に腕を回すことができない…」
「肩を内側に捻ることができない…」
五十肩(別名:肩関節周囲炎)の患者さんの訴えは、痛みや可動域制限など多岐にわたります。
私たち『整体院つなぐ』に来院された肩の痛みで苦しむ患者様の訴えです。
「ズボンや下着を上にあげるのが辛い」
「最近、だんだん痛みが強くなって、家事が辛い」
「髪の毛が洗えないし、ドライヤーがうまくできない」
「腕が上がらなくて、夫に手伝ってもらわないといけないのが申し訳ない」
「いくつも整骨院に行ってみたけど、五十肩がひどくなっている感じがする」
五十肩は自然治癒することもありますが、放置すると症状が長期化することがあります。
痛みや可動域制限が続く場合は、早めに専門家にご相談ください。
目次
- 1.五十肩とは?
- (1)五十肩の症状
- (2)五十肩の経過
- 2.五十肩の治療法
- (1)治療や施術の種類
- (2)五十肩を放置するとどうなる?
- 3.五十肩の原因|一体何が起きている?
- (1)加齢による変化
- (2)運動不足
- (3)姿勢の悪さ
- (4)ストレス
- (5)その他の原因
- 4.五十肩のメカニズム
- (1)肩関節周囲の組織の炎症
- (2)痛みと可動域制限
- (3)拘縮
- 5.五十肩の予防
- (1)正しい姿勢を保つ
- (2)適度な運動を続ける
- (3)同じ姿勢を続けない
- (4)冷え対策をする
- (5)ストレスを溜めない
- 6.注射療法・薬物療法を選択しない理学療法・運動学によるアプローチ
- (1)理学療法・運動学的アプローチのメリット
- (2)具体的なアプローチ方法
- (3)生活の質を向上させる|理学療法・運動学的アプローチ
- 7.理学療法士の役割
1.五十肩とは?

五十肩は、40代~60代に多く見られる肩の痛みと可動域制限を伴う疾患です。
はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、加齢による肩関節周囲の組織の変性や、運動不足、ストレスなどが関与していると考えられています。
(1)五十肩の症状
主な症状は、肩の痛みと可動域制限です。
痛み
五十肩の初期は、肩を動かすと痛みが生じます。
症状が進行すると、安静時や夜間にも痛むようになり、激しい痛みで眠れないこともあります。
可動域制限
腕を上げたり、後ろに回したりするのが困難になり、着替え、洗髪、整髪など、日常生活の動作に支障をきたします。
(2)五十肩の経過
五十肩は、一般的に以下の3つの時期を経て回復に向かいます。
急性期
炎症が強く、激しい痛みが続く時期(数週間~数カ月)
拘縮期
痛みは軽減するものの、可動域制限が顕著になる時期(数カ月~半年)
回復期
可動域が徐々に改善していく時期(半年~1年)
2.五十肩の治療法

五十肩の治療法は、症状の時期や程度によって異なります。
肩の痛みや可動域制限が続く場合は、自己判断せずに、早めに専門家に相談してください。
(1)治療や施術の種類
① 薬物療法
痛み止めの薬や湿布などを用いて、痛みや炎症を和らげます。
② 理学療法
運動療法や物理療法を行い、関節の可動域を改善します。
③ 注射療法
ヒアルロン酸注射やステロイド注射などを行い、痛みや炎症を抑えます。
④ 手術療法
症状が改善しない場合に、手術を検討することがあります。
(2)五十肩を放置するとどうなる?
五十肩を放置すると、痛みが慢性化したり悪化したりすることがあります。
痛みの慢性化
急性期に適切な治療を行わないと、痛みが慢性化し、長期にわたって続くことがあります。
慢性的な痛みは、日常生活に支障をきたすだけでなく、精神的なストレスにもつながります。
可動域制限の悪化
五十肩を放置すると、肩関節の可動域制限がさらに悪化し、日常生活動作が困難になることがあります。
腕を上げたり、後ろに回したりする動作が制限され、着替えや洗髪、整髪などができなくなることがあります。
周囲の筋肉の萎縮
肩関節を動かさない状態が続くと、周囲の筋肉が萎縮し、肩の機能が低下することがあります。
筋肉の萎縮は、肩の可動域をさらに制限し、痛みを増強させる原因にもなります。
癒着
炎症が長引くと、肩関節周囲の組織が癒着し、関節の動きがさらに制限されることがあります。
癒着が進行すると、治療が困難になることがあります。
3.五十肩の原因|一体何が起きている?

五十肩は、肩の痛みと可動域制限を伴う一般的な疾患ですが、その原因は完全には解明されていません。
しかし、いくつかの要因が複合的に関与していると考えられています。
(1)加齢による変化
肩関節を動かす腱板という組織が、加齢とともに柔軟性を失い、傷つきやすくなります。
また、肩関節を包む関節包が硬くなり、可動域が制限されます。
(2)運動不足
肩周りの筋肉を使わない生活が続くと、筋肉が衰え、関節の動きが悪くなります。
筋肉の柔軟性も失われ、肩関節の安定性が低下します。
(3)姿勢の悪さ
猫背や前かがみの姿勢は、肩関節に負担をかけ、炎症を引き起こしやすくします。
長時間のデスクワークやスマホの使い過ぎも、姿勢が悪くなる原因となります。
(4)ストレス
精神的なストレスは、筋肉を緊張させ、血行を悪くします。
肩周りの筋肉が緊張すると、肩関節の動きが制限され、痛みが生じやすくなります。
(5)その他の原因
病気や怪我が五十肩の原因となる場合があります。
糖尿病や甲状腺疾患などが、五十肩の発症リスクを高めることがあります。
また、過去の肩の怪我や手術が、五十肩の原因となることもあります。
五十肩の原因は、複合的な要因が絡み合っていることが多く、特定が難しいケースも少なくありません。
しかし、加齢、運動不足、姿勢の悪さ、ストレスなどが関与している可能性は高いと言えます。
4.五十肩のメカニズム

五十肩の具体的なメカニズムはまだ解明されていませんが、一般的には、以下のような流れで症状が現れると考えられています。
(1)肩関節周囲の組織の炎症
何らかの原因により、肩関節周囲の腱板、関節包、滑液包などに炎症が起こります。
(2)痛みと可動域制限
炎症により、肩に痛みが生じ、可動域が制限されます。
(3)拘縮
炎症が長引くと、関節包が癒着して関節が硬くなり、さらに可動域が制限されます。
5.五十肩の予防

五十肩を予防するためには、以下のことに注意しましょう。
(1)正しい姿勢を保つ
猫背にならないように、背筋を伸ばして座りましょう。
(2)適度な運動を続ける
肩周りの筋肉を柔軟に保ち、関節の可動域を広げる運動を続けましょう。
(3)同じ姿勢を続けない
デスクワークなど、長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩をとりましょう。
(4)冷え対策をする
肩を冷やさないように、温かい服装をしたり、入浴したりしましょう。
(5)ストレスを溜めない
ストレスを解消する方法を見つけ、心身ともにリラックスできる時間を取りましょう。
6.注射療法・薬物療法を選択しない理学療法・運動学によるアプローチ

五十肩の治療において、注射療法や薬物療法を選択しない場合、理学療法・運動学的なアプローチが有効な手段となります。
(1)理学療法・運動学的アプローチのメリット
身体への負担がない
注射や薬物療法のような身体への負担がないので安心です。
副作用のリスクを回避できる
薬物療法のような副作用の心配がありません。
根本的な改善ができる
肩関節周囲の筋肉強化や柔軟性向上により、肩関節の安定性を高め、症状の根本的な改善を目指せます。
再発を予防できる
正しい姿勢や動作を身につけることで、再発を予防できます。
(2)具体的なアプローチ方法
運動療法
① ストレッチ
肩関節周囲の筋肉(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋など)を柔軟にし、関節の可動域を広げます。
② 筋力トレーニング
肩関節を支える筋肉(三角筋、僧帽筋、菱形筋など)を強化し、関節の安定性を高めます。
③ 姿勢矯正
正しい姿勢を身につけ、肩関節への負担を軽減します。
④ 可動域訓練
制限された肩関節の可動域を徐々に広げていきます。
生活指導
生活指導では、肩関節に負担をかけない姿勢や動作や、肩に負担をかけない適切な運動を指導します。
(3)生活の質を向上させる|理学療法・運動学的アプローチ
理学療法・運動学アプローチは、効果が現れるまでに時間がかかることがあります。
根気強く続けることが大切です。
五十肩に対する注射療法・薬物療法を回避した理学療法・運動学的なアプローチは、患者様のQOL(生活の質)を向上させる上で有効な手段です。
専門家である理学療法士と連携し、根気強く治療に取り組むことで、症状の改善や機能回復を目指せるでしょう。
7.理学療法士の役割

理学療法士は、運動学や解剖学の専門知識を活かし、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、適切な運動療法を提案します。
肩の痛みの原因を特定し、根本的な改善を目指すことで、患者さんの生活の質を高めることができます。
一人ひとり、肩の痛みの症状や状態は異なります。
必ず専門家に相談し、ご自身に合った改善を目指しましょう。